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「はあ……っ」
立ち上がります。それだけでも結構辛い。ボディを叩かれるのは、いつぶりでしょうか。
息苦しさが一秒という時間を、永遠にも感じさせてくれます。……今度から遅刻しそうなときは、ボディを入れておきましょう。
「これは逃げておくべきでしたか」
剣を構えながら、けひゅー、と情けなくも弱々しいため息を吐きます。
私つえーなんてできませんでした。
私はね、普通の学生なんですよ。魔物と戦うなんて馬鹿ですか!
ええ、馬鹿ですよ私!
『……』
とか言っている間にスライムは私へ接近。勝鬨を上げようと、全員が勇んで跳躍しています。速度は先程の十倍程度。
私をサンドバッグにでもするのでしょう。もしくは、凌辱――はっ!? これはこれで人気がとれる!?
……い、いえ。私がスライムに蹂躙されたとして、何の得があるんですか。誰得ですよ。
「断固抵抗ですよ」
そうはいきません。
鈍いお腹の痛みも引きましたし、今度は私のターンです。
数は相手が上。反撃ばかりだからジリ貧になるのです。
一撃で倒せるのだから、自分からバッサバッサ行けばいい。
「さあ、覚悟して下さい!」
そうと決まれば行動あるのみ。意気込んで走り出します。
まず一番近くのスライムへ。素早く肉薄した私は、剣を縦に振るいます。
「たあっ!」
見事命中。スライムは両断――されたのはいいですが、勢いよく下ろした獲物がスライム以外に刺さりました。
砂利が擦れる嫌な音がします。
母なる大地は、他者を狙った剣ですら受け止めてくれるようです。なんて慈悲深い。
「あほー!」
何が武器の扱いですか! 素人当然ですよ!
慌てて引っ張りますが、地面に切っ先が刺さった剣はビクともしません。この何もない場所で伝説の剣となる所存のようです。
そんなことをしている間に、いつの間にか他のスライム達は私を取り囲むように展開していました。
あ、まず――
武器もない今、対応できる筈もなく、私は身体を抱えるようにして防御の姿勢をとりました。
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