三章:真夜中の来襲者

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   肩を落とす私。フルスさんは暢気に欠伸をしながら続ける。   「それに継承者は強大な力を持つとも言われるし、あなたはどう見ても……」   「そんな器じゃないと」   「ええ、そうですわ」    はっきり言ってくれましたね。自分でも分かってますが。    ……けど、おかしいです。異世界が地球に限られているとしたら、それほど強くない筈なのに。フルスさんの口振りだと、異世界から来た瞬間から強い、みたいな感じですよね。   「しかしフルスさん。私にそんな説明していいんですか?」   「いいの。継承者くらいは神話レベルだから。遺産がここにある、っていうのは企業秘密だけど」   「なるほど、そういうことですか」    さっきまで沈黙してたのに、やたら喋るなと思ってたら、そのような理由でしたか。    私が納得して頷くと、今まで狭かった道が急に開けました。周りの壁が目視できぬほど遠くなり、突然の変化に戸惑います。    ダンジョンの大広間みたいです。場の雰囲気も、なんとなくですが神秘的で、威圧感があります。    先程の道とは視覚的にも感覚的にも違います。   「フルスさん、ここは?」   「遺産の隠し場所。ちょっと待ってて。明かりを点けるから」    そう言ってボソボソと何かを呟きはじめるフルスさん。    おっ。魔法ですか? 初魔法ですか? 小声を耳にしながら、私は期待して発動を待ちます。    初魔法が照明とはちょっと派手さに欠けますが、最初はそんなものでしょう。    よく洞窟を照らしたりしたものです。……いや、最初は木を切りましたっけ? あー、記憶が曖昧模糊です。    151の古きよき思い出に浸っていると、フルスさんは手にしていたカンテラを上に掲げました。   「――シャイン!」    最後に強く叫び、詠唱が終わります。    すると目映い光が前方から放たれました。反射的に目が閉じます。手も顔の前へ。それでも、まだ眩しいと感じる光の強さでした。  
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