三章:真夜中の来襲者

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  「まあ隠し場所はともかく、まだ盗られてなくて良かったですね」   「そうね。これなら――」    不意に遺産を見ていたフルスさんが、目を鋭くさせました。    何事かと思った瞬間、部屋の奥から大きな音が立ちます。    剣と剣が擦れる音によく似ていました。不快な金属音に思わず身を縮こませ、私はフルスさんから台座の方へ振り向きます。    幕が切れるように、紫色のオーラのようなものがヒラリと落ちます。するとその向こうから、二人の人間が現れました。    台座の横。遺産のすぐ傍です。驚く私達を見て、来襲者らしき二人は嘲笑うような笑みを浮かべます。   「よお、待ってたぜ」    まず言葉を発したのは少年。金属音を発したらしき床に刺さった大剣の柄を掴み、よく通る声で言います。    短い黒髪、大きな目に、元気そうな顔立ち。やんちゃという一言が似合う男の子です。    白いシャツと灰色のパーカーのようなフードがついたジャケット、ズボン、と服装は村人Aと呼ぶに相応しい地味さですが、中々の美少年。    と、思うんですが。何故か素直に褒められません。というか……あれ? 私なんかこの人に見覚えありますよ?    いえ、見覚えなんてレベルじゃありません。   「お前らのどっちが遺産の所有者だ? 俺達に遺産を――」   「リュウヤ……ですよね?」    彼の言葉を遮り、私は尋ねます。    私の記憶が正しければ、彼は私の幼なじみ。そして、師匠の一人。    御劍 竜哉(ミツルギ リュウヤ)に間違いありません。    地球では突然行方不明になり、一年間会っていませんでした。    くたばったものかと思ってましたが……異世界に来てたんですね。思わぬ再会に心が踊ります。世界は狭いものです。   「あぁ? なんで俺の名前を――なあぁ!?」    間違いなかったみたいです。私をジッと眺めたリュウヤは、突然悲鳴のような叫び声を上げます。  
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