三章:真夜中の来襲者

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   一年ぶりの再会だというのに、ひどいリアクションですね。    幼なじみなんですから、少しくらい喜んでくれても。   「ロウ……まさか知り合い?」   「幼なじみです。武器の扱いを習ったりしてましたね」   「異世界って狭いのね」    フルスさんがため息を吐きます。私も同意見でした。まさか死んだと思っていた幼なじみに会うなんて。    私は嬉しくなって笑いかけます。   「リュウヤ。会えて嬉しいです。元気にしてましたか?」   「あのなぁ……俺がなんで驚いたか分からないか?」    私が喜ぶ一方、リュウヤは複雑そうな表情をしていました。    はて、なんで驚いたのでしょうか? 分かりません。    頭の上に?を浮かべる私を見かねたのか、リュウヤは返事を待たずに告げます。   「お前が敵側にいるからだ。コスプレみたいな服を着ているからだ」   「台詞の後半部分カットしてもいいのでは?」   「とにかく、お前と馴れ合うことはできないというわけだ」    リュウヤは冷たく言い放ちました。    確かに遺産を奪う立場ならば、商会に所属する私とは対立関係になります。馴れ合うことはできないかもしれません。    幼なじみと戦うかもしれない。敵を切る覚悟を決めた筈なのに、私の決意は揺らぎます。    継承者がリュウヤだなんて……。一体どうすれば。商会を裏切る気は微塵もありません。しかしリュウヤを殺すのは到底無理な気がしました。    何も言えない私に同情を少し含んだ視線を向け、リュウヤは刺さっていた大剣を軽々と抜きました。    それを肩に担ぎ、フルスさんへ顔を向けます。   「ロウは居候だろうし――遺産の所有者はお前みたいだな。遺産を譲る気はあるか?」   「これは家宝。正式な継承者が現れるまで他の継承者に譲る気はないわ」    銃と短剣を手に、フルスさんは勇ましく宣言しました。    怯むことなく、しっかり彼を見据えて。  
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