三章:真夜中の来襲者

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   考えられる理由は――   「遺産、継承者の力ですか……」    立ち上がります。幸いなことに腕が痛むだけで、ダメージはそれほどありません。    剣を構え、再びリュウヤへ向き直る。互いの武器が届かぬ位置で、私達は出方を窺うようににらみ合います。   「そうだ。ちょっと卑怯な気もするが、勘弁してくれ。これも遺産のためだ」   「……リュウヤは神になりたいんですか?」   「ああ。元の世界に戻るためにな」    神になれば、できないことなんてないでしょう。元の世界にも戻れる筈。    だから、遺産を手に入れようとする。   「なるほど。しっかりした理由はあるみたいですね。……ですが、はっきりしました。リュウヤは敵ですね」   「最初からそうだって言っているだろ。本気でこいよ」    リュウヤは敵です。元の世界に戻るため、私やフルスさんを殺す覚悟があるでしょう。実際、私を殺すつもりで大剣を振ってきました。    なら――私だって。    フルスさんを守ると決めたのです。幼なじみだからといって、躊躇うことはありません。    着物の少女と戦ったときも、中途半端で痛い目を見たのです。    奪わなければ、奪われる。リーレンさんの忠告を無駄にするわけにはいきません。   「では……いきます!」    切れるわけがない。そう叫ぶ自分に、フルスさんを守るのだと言い聞かせ、私は駆けます。  
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