三章:真夜中の来襲者

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  「なんで――あれを受けて無傷なの!?」    フルスさんの驚愕した声が聞こえます。詠唱に時間をかけた魔法です。威力に自信があった筈。しかしそれが綺麗に命中したにも関わらず、リュウヤは生還したのです。    私も動揺が隠せません。おかしいのです。    私は勝利を確信していました。ですがそれは、魔法が命中したからではありません。    魔法が当たる少し前、リュウヤの焦った表情を見て、勝ったのだと考えたのです。    攻撃が迫り、焦る。それはつまり、対処法が見つからず、考えているということです。    即ち、王手の状態。そこを待ったなしで攻めたのだから――勝つのが道理。    なのにリュウヤは立っている。服は少し焦げているように見えますが、身体に傷はありません。    服が特殊、とかの線はなさそうです。    遺産が身体能力を上げ、魔法への耐性も上がる……というのも思い浮かびましたが、有り得ない。それならリュウヤが焦った理由に説明がいきません。    ――消去法で大まかな予想はつきました。   「何か使いましたね?」    攻撃が迫っているが手元にない、もしくはすぐ使えない。そのような道具を使用し、命からがら生還したのでしょう。    それなら焦っていた理由、服が焦げている訳も分かります。   「相変わらず観察力は並み以上だな。ああ、ハンデで教えてやるよ」    楽しげに笑うリュウヤ。彼は床から抜いたらしい大剣を、前にかざしました。    飾り気のない武器です。一切描写をしてきませんでしたが、シンプル過ぎて面白くありません。    柄、刀身……全てが繋がっており、平坦。刻まれた線でようやく、どこからが刃なのか、柄なのか、境界を把握できます。    最早、大剣の形をした鉄の塊です。色は白くピカピカに輝いていて、結構綺麗なんですけどね。    身長ほどはあるそれを見つめ、リュウヤは口を開きます。   「神の遺産……その一つ、『魔断の剣』。あらゆる魔力を断ち、吸収する力を持つ大剣だ」    ま、魔断の剣……?魔力を断ち、吸収……?    ……。    そんなんチートや!  
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