三章:真夜中の来襲者

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   しかしそれならば服が焦げていた理由も納得できます。    魔法に当たった後、燃えながら大剣を振ったのでしょう。    的確かつ勇敢な行動……あの人はずっと変わりません。   「納得してくれたみたいだな。じゃあ――再開だ!」    リュウヤは言って、走り出します。今度は私ではなく、フルスさんに向かって。    魔法を切れるのに、魔法使いのフルスさんを狙う……? 何を考えているか分かりませんが、守らないと。    少し遅れて横へ。私もフルスさんに向かって走ります。――が。   「遺産のため、倒させてもらうぜ」    速い。追いつきません。リュウヤはさっきと比べものにならない速度で、フルスさんに接近しました。    近づかせまいとフルスさんが銃を撃つも、止まることなく進みます。    まずい。私がどう走っても間に合わない。フルスさんの実力に期待したいところですが、十中八九接近戦ではリュウヤの方が強い。    くそっ、最初は本気で走ってなかったんですね。    リュウヤが剣を振る。走った勢いを利用し、大きく上から下へ振り下ろし。    フルスさんに大剣が迫ろうとしている。振りかぶった姿を見るだけでゾッとします。   「フルスさん!」   「分かってますわ! 心配しないで!」    叫んで、フルスさんは後ろに大きく下がります。一歩の跳躍で、不自然なほどの距離を進み、何もなかったかのような自然さで着地しました。    大剣のリーチから楽々脱出。攻撃をかわし、そこへすかさずフルスさんが銃を一発発砲。    轟音が反響します。リュウヤは下ろした剣を軽く上げ、無傷のままで立っていました。数秒後、銃弾が地面に落ちます。    止められました。隙を突いた攻撃でしたが、やはり通りません。    ならば。手にしたハンマーを振り上げ、私はリュウヤの足目掛けて斜め横に下ろします。    ――ようやく追いつきました。不意打ち気味ですが、そこはお互い様です。実力的にも能力的にも差があるのですから。    無防備な背後から足への攻撃。当たっても死にはしないでしょうが、避けられない筈。  
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