三章:真夜中の来襲者

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  「遅いぜ」    不自然な動き。チラリとも見ていないくせに、最初から分かっていたかのような正確さでリュウヤが跳躍します。    容易くかわされました。驚くべき身体能力です。が、それだけで終わりません。跳躍と同時に、彼は私を蹴り飛ばしました。    綺麗なカウンターです。普通な人間の私は避けられません。殴られたときと同じように、理不尽な力で私は撥ね飛ばされます。    ようやく止まったとき、私は視界が霞んでいることに気づきました。そんなにくらっていないのに、ダメージは深刻です。身体が動かず、息も弱々しい。    なんとかフルスさんの方を見るのが限界でした。    武器を使わずにコレ……。   「本当に、チートですね」    苦笑しながら手を床につきますが、やはり立てません。指先が床を撫でるように滑ります。    完敗、としか言い様がありません。   「……」    恩返しなんてできなかった。呆気なく敵に負け、守るべき人がやられる。    情けない。私は……やっぱり主人公になんてなれないんですね。    自分が哀れでしかありませんが、何もしないで寝ているわけにはいきません。    諦めずに手を動かし続けます。意識があるなら、まだ何かできる筈。   「お母さん……っ!」    死ぬのはそれからです。    必死に立とうとする私。そのすぐ後、フルスさんに接近するリュウヤが見えました。    魔法が効かないと知ったからか、フルスさんは短剣でそれに挑みます。魔法、銃、遠距離での攻撃が防がれる以上、彼女の戦う術は短剣での攻撃しかありません。    しかしそれも通用するか定かではないです。接近戦ではリュウヤに分がある筈。    魔断の剣……身体能力強化と魔力の切断、吸収。シンプルながら隙がない構成です。    せめて魔法使いが二人以上いれば、遠距離から連打で押しきれそうですが……援軍は期待できませんし。  
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