三章:真夜中の来襲者

31/31
前へ
/115ページ
次へ
                    『神の力を継ぎ、世界を導く資格を持つ者よ』    私は何もない場所に立っていました。ふと、我に帰るように視界は透明な景色を移し、意識が戻ります。    この世界に来る前、あの謎の人物と話した場所と似ていますが、圧倒的に違う。周囲の色は白より無色に近く、どこか神聖な雰囲気を感じさせます。    私にかかる声もまた、あの時とは異なったものでした。口調に波がなく、単語を区別できるアクセントのみで言葉を紡ぐ彼からは、感情を感じられないのです。機械が喋ったら、きっとこんな具合なのでしょう。    私は意識が戻り、冷静な思考が始まっても、しばらく動くことができませんでした。あまりにも突飛な展開。それに誰がついていけるものか。    ついさっきまで、私は遺産を継承するような人間ではないと言われ、信じていたのに。なんて超展開ですか。    ……。    いや、でもこれはチャンスかもしれません。リュウヤみたいに強くなれたら……フルスさんを助けるのに、間に合う可能性も。   『汝、全ての遺産を手に入れ、神となる覚悟があるか?』   「あります!」    私は応えました。姿形の見えない声に躊躇なく。    私が逆転するためには、この手しかない。それで継承者の戦いに巻き込まれても、後悔しないと誓いましょう。   『では汝に遺産の力を与えよう。継承者よ、幸運を」    意外とあっさりしてます。説明とかないんですかね。    やはりちっとも感情のない手短な言葉。謎の声は淡々と言って、その存在を消しました。    どこにいるか分かりませんが、確かに『そこ』からいなくなったのです。    残された私はポカンと立ち尽くし――不意に頭に痛みを感じ、また意識を手放すのでした。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加