一章:遭遇

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   女の子がバコバコ叩かれるのを観察する趣味はないのです。    少女を助けようと伝説の剣を引っ張りますが、相変わらず抜けません。    くっ! 私に勇者の資格はないのですね!   「動かないで。当たるわよ」    私が馬鹿をやっていると、少女の声が聞こえました。    真剣な殺気を込めた声です。ギャグテイストだった空間が、一気に緊張で張り詰められました。    何かするつもりなのでしょうか?    少女の変化に反応し、私が振り向こうとした。その時。    耳を塞ぎたくなるような、大きい音が弾ける。    音からワンテンポ遅れて、少女を視界に捉えた私は、そこで驚くべきものを目にしました。   「じゅ、銃……!?」    リボルバーです。ファンタジー世界に似つかわしくない品を、少女が手にしていました。    黒く輝くそれは、自動式の物より原始的に感じますが、古色というものを感じます。渋いとでも言いますか。    両手でしっかり構え、少女は銃を次のスライムへ向けます。    そして――発砲。    先程聞いた大きな音と共に、スライムが一匹弾けました。    あと二匹。少女は真剣な表情を崩さずに、銃をしまうと、次なる武器を出しました。    黒の柄と白い刃。シンプルな作りの短剣は、それが武器なのだと、見るだけで強く意識させます。    手にした短剣を、器用に片手で逆手に持ちかえ、少女は息を短く吐く。   「弾が勿体ない――っと」    スライムへ肉薄する少女。まずは下段に一振り。右から左へ、一文字にナイフを振るい、スライムを軽々撃破。    残り一匹。スライムもただやられるつもりはないらしく、攻撃後の無防備な少女目掛けて突進を仕掛ける。    タイミングはバッチリ。当たる筈――でした。   「遅いですわ」    少女は私の予想を越えた動きを見せます。    右から左――そして、左から右。初撃とは逆の動きで、まるで見ていたかのように、短剣をスライムに突き刺しました。  
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