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女の子がバコバコ叩かれるのを観察する趣味はないのです。
少女を助けようと伝説の剣を引っ張りますが、相変わらず抜けません。
くっ! 私に勇者の資格はないのですね!
「動かないで。当たるわよ」
私が馬鹿をやっていると、少女の声が聞こえました。
真剣な殺気を込めた声です。ギャグテイストだった空間が、一気に緊張で張り詰められました。
何かするつもりなのでしょうか?
少女の変化に反応し、私が振り向こうとした。その時。
耳を塞ぎたくなるような、大きい音が弾ける。
音からワンテンポ遅れて、少女を視界に捉えた私は、そこで驚くべきものを目にしました。
「じゅ、銃……!?」
リボルバーです。ファンタジー世界に似つかわしくない品を、少女が手にしていました。
黒く輝くそれは、自動式の物より原始的に感じますが、古色というものを感じます。渋いとでも言いますか。
両手でしっかり構え、少女は銃を次のスライムへ向けます。
そして――発砲。
先程聞いた大きな音と共に、スライムが一匹弾けました。
あと二匹。少女は真剣な表情を崩さずに、銃をしまうと、次なる武器を出しました。
黒の柄と白い刃。シンプルな作りの短剣は、それが武器なのだと、見るだけで強く意識させます。
手にした短剣を、器用に片手で逆手に持ちかえ、少女は息を短く吐く。
「弾が勿体ない――っと」
スライムへ肉薄する少女。まずは下段に一振り。右から左へ、一文字にナイフを振るい、スライムを軽々撃破。
残り一匹。スライムもただやられるつもりはないらしく、攻撃後の無防備な少女目掛けて突進を仕掛ける。
タイミングはバッチリ。当たる筈――でした。
「遅いですわ」
少女は私の予想を越えた動きを見せます。
右から左――そして、左から右。初撃とは逆の動きで、まるで見ていたかのように、短剣をスライムに突き刺しました。
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