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「冗談です。本当はあなたに感謝しています。身体を差し出したいくらいです」
「やめなさい。……はあ、ふざけた人ね」
少女は盛大にため息を吐く。私という人が分かりかけてきたのか、ツッコミの兆しが見えてきました。
額を押さえ、少女が私へ視線を向けます。
「あなた、こんな場所で何をやってたの?」
「いい質問ですね。実は何もしてませんでした」
「……はい?」
起きたら襲われたので、間違ってはいない筈です。
頭の上に?を浮かべる少女。けど彼女は、すぐ何か納得したかのように、手をポンと叩きました。
「あなた、別の世界から来たのね」
見事命中です。ほう、この物分かりの良さ――前例があるのでしょうか?
この人、害はなさそうですし、語ってみますか。
「はい。別の世界から来ました。なんか世界の管理人だとかいう、変な人に会いまして……。ここで目覚めた次第です」
大まかに、かくかくしかじかと話します。
すると、不審者を見るような目をしていた少女が、一変して好奇に満ちた視線を向けてきました。
「なるほど。つまりあなたは、この世界の人間じゃないと。そういうことですわね?」
先程自分でそう口にしていましたのに、また言いますか。
悪役のような笑みを浮かべ、少女は私を下から上まで舐め回すように観察します。
流れからして……異世界からやって来る人間は珍しい、とかですかね。
「ま、まさか――私の身体が目当てですか! 冗談本気にしちゃうタイプですか!」
「ち違うわよ! 珍しいから見てただけ!」
分かっててもふざけてしまうのが、私の性でございます。
それにしても……やっぱり異世界からの来訪者は珍しいんですか。
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