一章:遭遇

12/33

98人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
   けど、典型的なのも嫌いではありません。っていうか、可愛い女の子なら大抵いけますし。   「なるほど、ニュアンスの違いですか。重要ですよね」   「……なんか馬鹿にされてる気がするわ」    ニヤニヤする私に、少女はうんざりした調子で言います。    一応愛でてるんですけどね。   「で、雇われる? 別に返答はいつでもいいけど――」   「雇われます。是非、働かせて下さい」   「……」    少女は呆気にとられました。傍目から見て分かるくらいに。    そのままフリーズ。動かなくなります。   「駄目でしたか?」   「だ、駄目じゃないわ。けど、あなたは異世界に来たばかりで、私にも会ったばかりで……分かりますわよね?」    即答しすぎですか。迷いがない私を、不思議がっているみたいです。    私も不審に思うでしょう。    けど、今の状況を考えたからこそ、この結論に至ったのです。    一人で歩いては、まともに生活できませんし。この人に粘着するのが最善です。    考えて、私は真面目な表情で言いました。   「私はあなたを信じてますから。私を助けてくれたあなたを。……だから大丈夫です」   「馬鹿ね。騙されても文句言うんじゃないわよ?」    少女は顔を少し赤くさせ、ぶっきらぼうに返します。    騙されても文句は言うまい。騙されて奪われるものはありませんし、美少女に虐げられるなら本望です。    簡単な生物なのです。私という人間は。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加