一章:遭遇

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                     草原から十五分ほど歩き、街らしき場所の入り口に到着しました。    中々にファンタジーです。    高い石の塀に囲まれており、周りにはそれを更に取り囲む堀があります。    入り口には木の跳ね橋がかけられていて――堅牢な作りの『街』、というよりは『お城』に見えました。    若干歪な塀の石、跳ね橋の造りから、科学の匂いはしません。    中世西洋。つまりはロマンの香りを感じられました。    こうして見ると、本当に異世界に来たのだと実感できます。    元の世界なら、ビルが一つも建っていない時点で、街と呼ぶのも躊躇うレベルですしね。   「『ロイヒテンモーント』。夜も輝く丸い街――私が住んでる場所よ」    跳ね橋を渡る頃、フルスさんは自慢するように言いました。    ロイヒテンモーント。……輝く月、ですかね。記憶が正しければ。    夜も明るく、円形な街――なるほど、まさに月と呼ぶに相応しいです。   「夜も明るい、って電気があるんですか?」   「電気? ああ、『アレ』のこと。違うわ。夜は蝋燭やランプであちこち照らされるの」    『アレ』とはまた気になる言い方を。電気は普及してないようですが、存在は知っているようですね。    私の横を歩くフルスさんは、視線を少し右へ向けます。    そこには、バッグを背負った人、カゴを持った人、馬のような牛のようなモンスターに乗った人……様々な人たちが、多く行き交っています。    年齢も性別もまちまち。しかし皆、元気のある顔をしていました。   「ここは商業が盛んな都市で、なんでも手に入るし、帝都へ向かう船も出るわ。さらには王都に近いから……夜も営業中というわけ」    つまり二十四時間需要があると。    この辺りの中心に立つ街なのですね。場所が中心なのかは分かりませんが、聞いている限り流通の中心にはいそうです。  
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