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私は夢の中をさ迷っていました。
視界はぼんやり。意識もはっきりせず、自分が何をしているのか、何を口にしているのか、認識できません。
ゾンビのように歩いているか――はたまた、就活に勤しむ学生のように背筋が伸びているか。
そんな天と地とでも言える差があったとしても、今の私には分からないでしょう。
ですが不思議なことに『さ迷っている』という感覚はありました。先述したように。
夢の中、なのかは分かりませんが。
しかし、まあ、なんて言ったらいいのやら。
うーん。
とにかく、こんな不思議な思いをするのは、夢しかないと思うわけですよ。
そもそも意識がはっきりしないのに、こんな描写をしていること自体がおかしいのです。
現実では有り得ません。つまりこれは夢。
手厳しい地球に、ファンタジーなるものは創作物か、夢の中にしかありません。
――そう。別世界でもなければ。
「こんばんは」
不意にかかる声。
混濁と視界にかかっていたモヤは、それこそ夢のように消え去りました。
そしてまた、夢のように覚める意識。
私は立っていました。
どこに? 何もない、真っ白な空間に。
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