一章:遭遇

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   草原から、橋。そして街へ。すると食べ物の芳ばしい匂いと、潮の香りが漂ってきました。   「ほぉ……」    跳ね橋を渡りきると、変化も明確に現れます。    先述した匂いの他に、視界に変化が。石造りの建物が並ぶ、大通りらしきものが見えてきました。    橋以上に人が多く、広い道の両端にはお店が開いています。    食べ物や雑貨やら、色々なお店が見えて――観光地みたいですね。   「これは中々。すげぇ! とでも言いますか」   「広いから迷わないように気をつけなさい」   「ういー」    フルスさんはそれらへ目もくれずに、大通りを進みます。    名残惜しいですけど、高校生にもなる女子が迷子イベントを起こすわけにはいきますまい。私は彼女の後ろをぴったりついていく。    これから住む街ですから、観光するのは後でもいいでしょう。ええ、私は大人なのです。   「うー……」   「案内は後でするから、今は我慢なさい」    未練が口から出ていたため、子供のように宥められてしまいました。    誰ですか、大人だとか言ってたのは。ああ、顔が熱い。   「――ここを右ね」   「あ、はい」    何分か歩きました。    フルスさんは律義に後ろを振り向いて、声をかけます。そして私の返事を聞いてから、大通りの途中を右に曲がりました。    アヒルの子よろしく、私も後に続きます。大通りから横、少し暗い道が見えました。    建物の影が落ちていて、なんか……不良が似合いそうな道です。    見るからに静かそうでした。大通りの賑やかさを目にした今、私は歴然とした場のテンション差を感知します。   「……」    すごく不安になってきました。これから、寂れた酒場の地下とかに連れてかれて、一生労働させられるとか――    有り得ないとは思います。けれども不安の種は残すべきではありません。   「あの、私が働く場所ってどこなのですか?」    そう思って、私が尋ねたすぐ後、   「え? それは勿論――」    答えようとしたフルスさんが何者かに拐われて、視界から姿を消しました。  
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