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「あの、お嬢さん。フルスさんの骨が砕けますから、それくらいに……」
顔の見えない何者かさんは、女性のような声をしていました。なので一応、お嬢さんと呼んでおきます。
「え? あ……あぁっ! フルスがお姉ちゃんの下に!? だ、誰がこんなことを!?」
「あなたです」
それしか答えはないでしょうに。笑顔を浮かべて私は即答します。
倒した自覚もないとは。この人物、中々のフルスさん好きとみた。コミュニケーション好きな可能性もありますが。
「わ、私がフルスを……ごめんねぇ!」
私からは背中だけしか見えない人物ですが、狼狽えているのがよく分かります。
「謝るんだったら、さっさとどきなさい!」
「おうふ!」
その狼狽え故か。弛んだ拘束を見逃さずに、フルスさんが全力を込めた拳を、刺すような勢いで炸裂させます。
これは流石に効いたようで、上にいた人物から呻き声が漏れました。
「ご、ごめんなさい……」
ごめんねではなく、ごめんなさい。微々たる違いですが言葉に元気はなく、何者かはよろよろと立ち上がりました。可哀想に。
「まったく。相変わらずですわね。いい加減、所構わず抱きつくのは止めてくれない?」
ジトッとした目をし、憮然とした様子のフルスさん。立ち上がると服の汚れを払い、流れるように苦情を申し立てます。
「ごめんなさい……。けど、久しぶりだから嬉しくて」
「あのね、犬じゃあるまいし。話相手くらいにはなるから、普通に話しかけなさいよ」
……ふむ、結構仲がよさそうですね。
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