一章:遭遇

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  「――たあっ!?」    あまりの突拍子ない攻撃に、ついついリアクションがページを跨いでしまいました。    頭をペシンと叩くくらいの勢いでしたが、意外と痛い。   「ロウ。馬鹿なこと言うと叩くわ」    フィコさんの隣に立つフルスさんは、私を睨んできます。ピンポンの構えのように少し前屈みになり、片手を挙げ、いつでも叩けるとアピールをして。なんという臨戦体勢。    しかしここで臆したらいけません。私は雇い主にも意見を言える、芯のある人間でいたいのです。   「馬鹿なこととはご挨拶ですね。私は真面目にお嫁に貰おうかと――」   「話が飛躍してるじゃない!」   「バレました!」    二度目の打撃が額に命中しました。小意気のよい音が響きます。   「ごめんなさい……。もう言いません。フルスさんでいいです」   「謝ったのにまたすぐふざけたこと言ってるじゃない……」   「いえ、言わないのは贅沢です」   「私が妥協案か!」    記念すべき三度目です。あまり痛くない、けれども鋭いツッコミを受けます。    たった三回のツッコミでこの上達……フルスさんの才能が恐ろしいです。  
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