一章:遭遇

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  「……つ、疲れた。なんでこうふざけるのかしら」   「あはは、仲良しさんだね」    息を切らせたフルスさんへ笑いかける姉。フィコさんは、なかなかに平和な頭の造りをしているみたいです。    漫才コンビが仲良しと限らないように、私とフルスさんの仲はそれほど良くはない……筈。初対面ですし。   「仲良くないわよ、こんな奴。ただ雇ってあげようと思っただけ」   「とか言って、さっきは私に愛を囁いてきたんですよ」    それはよく分かっているんですけど、ついふざけてしまうんですよね。   「囁いてないわよ!」    そして叩かれるんですよね。    フルスさんは私を叩いた手をひらひらさせつつ、大きなため息を吐きます。   「止めてよね。姉さん勘違いしやすいんだから」   「フルス……私はフルスが女の子好きでもお姉ちゃんだよ!」   「ほら、こんな風にすぐ誤解するんだから。   姉さん。私の趣向で血筋が変わったら大問題よ」    冷たい。すごく冷たい返しです。    フィコさんはフィコさんで、すぐ誤解するとか言われてるのに、気づいてないし。   「え? じゃあフルスが女の子好きになっても、私の妹なの?」   「ええ、そうよ。それは変わらないから安心して」   「そっかー。良かったぁ」    これ誤解しやすい云々以前の問題で、単にフィコさんが馬鹿な気がしてきましたよ。    天然……ってやつなんでしょうか。これも。  
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