一章:遭遇

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   なんにせよ、可愛いからオール許容範囲です。全然許せます。結婚して下さい。   「――あ、私もうお仕事あるから行かなきゃ」    不意に用事を思い出したフィコさん。ハッとして手をポンと叩きます。   「ええ、行ってらっしゃい。あまりお客様を待たせたら駄目よ?」   「うん、大丈夫大丈夫。またね、フルス。ロウちゃんも。これからよろしくねー!」   「はい。また会いましょうね」    元気に去っていくフィコさんは、大通りに面し、尚且つ裏道にも面すとある店へ入っていきました。あそこが仕事場なのでしょう。    あの場所なら、大通りのフルスさんを見つけることもできます。   「お姉さんは何のお仕事をしているんですか?」   「私の商会の商品を売ってるわ。アクセサリーとか、武器とか」    気を取り直して歩き出す私達。裏道を奥へと進んでいきます。    アクセサリーに武器ですか。アンバランスといえばアンバランスですね。   「そういえば、フルスさんは社長なんですよね。お姉さんは社長やらないんですか?」   「あの人は店員の方がいいんだって」   「なるほど、気持ちはよく分かります」    責任からは逃れたいものです。社長の仕事も大変だと聞きますし、給料の高さは魅力的ですけどやりたくはない仕事ですね。    誰かの下について、定時に帰れるような比較的楽な仕事をしたいです。給料安くてもいいですから。   「姉さんは『人と直接関わって、その人を幸せにしてあげたい』って言ってたけど、意外ですわ。ロウが賛同するなんて」    ……とても勘違いされてますね。相手が可愛い女性客なら、関わって幸せにする(結婚する)のは大歓迎なんですが。   「いえ、私のは楽したいという気持ちからです」   「正直に言うのね……」    だって私と同じにされたら、優しいフィコさんが可哀想ですもの。    フルスさんは感心するような、呆れるような顔をします。  
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