一章:遭遇

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  「いいやつなんだか、悪いやつなんだか……よく分からないわ」   「私はいい人ですよ。美少女には特に」    攻略のため、好感度稼ぎは欠かせません。だから常に美少女には正直なのです。   「何を言ってるんだか……あ、着いたわ」    フルスさんの足が止まりました。好感度の計算をしていた私も、彼女にぶつかりそうになりながら立ち止まります。    薄暗い道の先にあったのは、豪華なお屋敷でした。    お屋敷の敷地を囲む鉄の柵が広く展開されており、土地の広大さを窺わせます。周りに建物がありますが、広さ故にお屋敷には影が当たっていません。そのため、お屋敷は明るく見えます。    ――いえ、明るく、ではありません。大きく、見るからに豪華そうなお屋敷は、むしろ輝いて見えました。    す、すごいです。窓が幾つあるのか、数えるのも容易ではありません。宮殿とか名乗っても何ら不思議はありませんよ。   「どう? ここが私の家よ。そして、我が商会の本拠地でもあるわ」    フルスさんが自慢げに言うのも、仕方ないでしょう。こんな立派な家を持っているなら、自慢の一つや二つくらいしなくては家に失礼です。   「これはすごいです。なんて言えばいいか……。とにかく、フルスさんがお買い得としか」   「そうね。私と結婚すれば、こんな立派な屋敷が――って、おいっ!」    もうノリツッコミだと……。フルスさんの才能は底なしですね。   「まあ、事実だからいいわ……。失礼だけど」    とか言いつつ、フルスさんは嬉しそうな顔をしてお屋敷の門を開きました。    一応ですが、家を褒められたのが嬉しいようです。可愛い人ですね。   「今は庭も絶賛整備中よ。もう少し見映えよくするの」   「見映えですか」    身長よりはるかに大きな門を通り、私達は庭を真っ直ぐ屋敷へと横断していきます。    確かに庭は、少し寂しい状態。辺り一面の芝生は目に優しいですが、その他植物はほぼ皆無。これぞ金持ち、といったわけの分からない置物もありません。    豪華な屋敷とセットで見たら、更に寂寥感にさいなまれることでしょう。  
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