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床はなければ、天井も壁もありません。何もない空間に、私はいます。
立っているとも、浮いているとも言えません。ただそこにいるのです。
足下にも何もありませんが、私は特に慌てませんでした。落ちるならもう落ちているでしょうし、ここは現実とはとてもかけ離れた場所。
私のちっぽけな常識は通用しないでしょう。
現に、私は地球で見ることのできないような人物と対面していましたから。
「やあ、目覚めはどうだい? 桐崎 楼(キリサキ ロウ)」
腰まである白い髪。サラサラと美しいそれに対し、服は黒ずくし。喪服のような物でした。
お洒落感は見事に相殺。
しかし顔つきは中性的で、いかにもな美男子――美少女?
ふむ、性別は分かりませんが、やはり顔がいいのは得ですよね。その人から感じるセンスやお洒落感が、二割三割変化しますし。
「あなたは誰ですか? ここは?」
彼は地球ではまず見ない人物です。髪色がおかしいですし、顔だって異様に綺麗です。
謎の人物に加え、謎の場所。
ここは地球ではない。そう仮定して、私は質問をする。
まったく物怖じしない私の問いに、人物は少し高い声でクスクスと笑った。
「僕は世界の管理人。そしてここは――君の知らない世界さ」
冗談っぽい様子で言われた言葉。
けど、何故でしょう。とても現実味がありました。
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