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「変人? 私がですか?」
しかし聞き捨てならない台詞が聞こえたので、果敢に会話を試みます。
「ああ、フルスが言ったんだ。私に変なことを言う阿呆だと」
きっぱりと話してくれる男性。社長を告発しているというのに、躊躇いがありません。
この方正直ですね。性格は結構好きかもしれません。
さて。
私はフルスさんへ向き直ります。
「……フルスさん?」
「せ、正当な評価でしょ! いつふざけるかも分からないし」
「私が、愛するフルスさんの言いつけを破る筈がないです!」
「今破ってるじゃない!」
な、なんて策士……。
そう言われては反論のしようがありません。絶対に破る自信がありましたし。
私は自己紹介に最後の一文を加える決意をします。
「そうですね。では認めましょう……私は変人です!」
今度こそ場が凍結しました。
拳をグッと握って高らかに宣言したのですが……明らかに浮きましたね。
「女性好きなだけですよ? 特に危害は加えません」
慌てて私が自らを補足すると、くすっと小さな笑い声がしました。
「フフッ、面白い子だ。いい拾い物をしたのではないか?」
先程の男性の隣、髭を生やしたダンディな男の方が言いました。
すらりとした細身の身体。白髪混じりの茶髪をオールバックにしており、眼鏡越しに優しげな蒼色の目が見えます。
落ち着いた色のシャツとズボン、ジャケット。ネクタイをきちんと身に付けており、服装の乱れも見当たりません。抜け目のない気配りが見て知れます。
寛容で穏やかな紳士。おじいちゃんと呼びたくなるような、素敵な方でした。
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