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「あたしはそうは思わないけど。むしろ身の危険を感じる」
紳士さんの有り難い台詞に、反論が出ます。
私は視線をそちらへ。先程まで認識できなかった女の子が、そこにいました。
小さな身体。可愛らしい顔立ち。意識せずとも視界に捉えるだけで、キュートさを感知できる女の子。
彼女は、元の世界で『幼女』と呼ばれる生物に酷似していました。
これは可愛い……。早く見つけられなかったことが悔やまれます。
小さすぎてテーブルから頭と肩しか出てないので、つい見逃してしまいました。
「こんな変人がいたら、フルス様が危ないよ!」
ふむふむ……髪は赤っぽい茶。一般的なロングヘアですね。カチューシャと、肩までの服装を見ると――おそらく、メイド服姿。
ということは、この方もお屋敷で働く仲間なのですね。信じられませんが。
「ちょっと! 貶してるのになんでニヤニヤしてるの!?」
ふむ、年齢は幾つなのか気になりますね。
敵意を剥き出しにしている幼女さんを前に、私は観察を続けます。怒っている顔も可愛い。
「本当に変人だ……。フルス様、なんでこんな奴を雇うんですか?」
こんな奴とはひどいですね。その問いは私も気になりますが。
「……それはさっき言ったでしょ。異世界から来た人間だからよ」
頭痛がひどいのか、額を押さえながらフルスさんは答えました。
『異世界から来た』。
それは果たして、雇うという選択に釣り合うメリットなのでしょうか?
私にはそう思えませんでした。
フルスさんは異世界から来た私に驚きませんでしたし、それほど珍しくない事なのだと分かります。
となれば、わざわざおかしな私を雇う必要はないのです。私よりもっと強い来訪者もいるでしょうし。
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