一章:遭遇

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  『……』    しかし皆さんは黙ってしまいます。反論をしていた幼女さんまで、ムスッとしながらも口を閉じていました。    フルスさんの選択に文句がないのです。小言すら出ないのです。    当然の選択。私を拾うこと、雇うこと――近くに置くことに、皆さん異存がない。    それは必ず、何かしらのメリットが発生することを示していました。    ――それとも、単にお人好しなだけか。   「……というわけで、このロウも今日からここで働くことになるわ」    まあ、いずれにせよ私には利点しかないわけです。仕事ができるのですから。    フルスさんの言葉に続いて、私は再度「よろしくお願いします」と頭を下げます。    細かいことは後でどうにでもなります。今は流されておくのが懸命ですね。   「えーと……話しておくことは……」   「私達の名前をまだ言っていないな」   「あ、そうね。じゃあ適当にお願い」    紳士さんの指摘を受け、フルスさんが指示を出します。    まず立ち上がったのは大男さんでした。身長が高いことは座高から窺えましたが、彼が立つとそれが如実になります。    お気楽な私が、思わず後退りをしてしまう程の威圧感。けれども彼はそんなものを消し去ってしまう、爽やかな笑顔を浮かべました。   「バッケ・ウルカーンだ。商品の製造を担当している。これからよろしくな、ロウ」   「あ、はいっ。よろしくお願いします」    バッケさんですね。いい人そうですし、よく憶えておきましょう。  
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