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『……』
しかし皆さんは黙ってしまいます。反論をしていた幼女さんまで、ムスッとしながらも口を閉じていました。
フルスさんの選択に文句がないのです。小言すら出ないのです。
当然の選択。私を拾うこと、雇うこと――近くに置くことに、皆さん異存がない。
それは必ず、何かしらのメリットが発生することを示していました。
――それとも、単にお人好しなだけか。
「……というわけで、このロウも今日からここで働くことになるわ」
まあ、いずれにせよ私には利点しかないわけです。仕事ができるのですから。
フルスさんの言葉に続いて、私は再度「よろしくお願いします」と頭を下げます。
細かいことは後でどうにでもなります。今は流されておくのが懸命ですね。
「えーと……話しておくことは……」
「私達の名前をまだ言っていないな」
「あ、そうね。じゃあ適当にお願い」
紳士さんの指摘を受け、フルスさんが指示を出します。
まず立ち上がったのは大男さんでした。身長が高いことは座高から窺えましたが、彼が立つとそれが如実になります。
お気楽な私が、思わず後退りをしてしまう程の威圧感。けれども彼はそんなものを消し去ってしまう、爽やかな笑顔を浮かべました。
「バッケ・ウルカーンだ。商品の製造を担当している。これからよろしくな、ロウ」
「あ、はいっ。よろしくお願いします」
バッケさんですね。いい人そうですし、よく憶えておきましょう。
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