一章:遭遇

28/33

98人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
  「はい次」    キビキビとフルスさんが司会を務めます。バッケさんは着席し、次に立ったのはダンディな紳士さん。    彼は軽く頭を下げると、自己紹介を始めました。   「リーレン・ソルダート。商会の様々なことを担当している。謂わば雑用だな。何か聞きたいことがあれば、いつでも回答しよう」    さまざまなこと? 総務みたいな役柄ですか?    よく分かりませんがあの自信……頼りになりそうです。リーレンさんも心のアドレス帳に登録しておきましょう。   「次ね」    司会が順番を回します。リーレンさんと交代に立ち上がったのは――あれ?    私は困惑しました。   「クロイツ・シュトラールです。よろしくお願いしますね、ロウ様」    薄い茶色をした短い髪。おおよそ平均的な悪いとも良いとも言えない顔立ち。執事のような黒い服を着た、特徴の見当たらない男性が立っているのです。    なんですか、このギャルゲーの主人公みたいな冴えない人は。今までどこにいたというのです。    戦慄を覚える私をよそに、クロイツと名乗った男性は人の良さそうな笑みを浮かべ、首を傾げました。   「……? どうしましたか? ロウ様」   「ふむ……私の推理だと、今初めて君を見つけたのだと思われる」   「え゛っ!?」    リーレンさん、なんて鋭い推理を。その通り。私は今初めて、クロイツさんに気付いたのです。    硬直するクロイツさん。相手が男性なので、私は遠慮なく問いかけます。   「最初からいたんですか?」   「いましたよ! ずっと!」    いたんですか、やっぱり。最初は幻説を疑いましたが、リーレンさんの台詞で大体把握してました。    クロイツさんは影が薄いのです。絶対。皆さん苦笑してますし。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加