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「はい次」
キビキビとフルスさんが司会を務めます。バッケさんは着席し、次に立ったのはダンディな紳士さん。
彼は軽く頭を下げると、自己紹介を始めました。
「リーレン・ソルダート。商会の様々なことを担当している。謂わば雑用だな。何か聞きたいことがあれば、いつでも回答しよう」
さまざまなこと? 総務みたいな役柄ですか?
よく分かりませんがあの自信……頼りになりそうです。リーレンさんも心のアドレス帳に登録しておきましょう。
「次ね」
司会が順番を回します。リーレンさんと交代に立ち上がったのは――あれ?
私は困惑しました。
「クロイツ・シュトラールです。よろしくお願いしますね、ロウ様」
薄い茶色をした短い髪。おおよそ平均的な悪いとも良いとも言えない顔立ち。執事のような黒い服を着た、特徴の見当たらない男性が立っているのです。
なんですか、このギャルゲーの主人公みたいな冴えない人は。今までどこにいたというのです。
戦慄を覚える私をよそに、クロイツと名乗った男性は人の良さそうな笑みを浮かべ、首を傾げました。
「……? どうしましたか? ロウ様」
「ふむ……私の推理だと、今初めて君を見つけたのだと思われる」
「え゛っ!?」
リーレンさん、なんて鋭い推理を。その通り。私は今初めて、クロイツさんに気付いたのです。
硬直するクロイツさん。相手が男性なので、私は遠慮なく問いかけます。
「最初からいたんですか?」
「いましたよ! ずっと!」
いたんですか、やっぱり。最初は幻説を疑いましたが、リーレンさんの台詞で大体把握してました。
クロイツさんは影が薄いのです。絶対。皆さん苦笑してますし。
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