一章:遭遇

29/33

98人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
  「やっぱり影が薄いんですね、僕。けど、もうそんなことは言わせな」   「次」   「くぅっ……!」    無慈悲にも司会は順番を回します。    どんどん短くなっていく台詞。そして律義に守る必要もないのに、肩を落としながら大人しく席に着くクロイツさん。    それらは、スイッチ一つで穴に落ちていく芸人を彷彿とさせます。落ちる側も落とす側も、回数をこなす度にタイミングを掴んで、だんだん巧みになっていくアレです。   「……」    さて、最後です。小さなメイドさんが立った――のですが、おでこから下がテーブルに隠れてしまうので、彼女は小走りで移動しました。    まだ私が気に入らないのでしょう。不機嫌な表情をしています。    それでも、きちんと私に見える位置へ移動する幼女さんは、とても可愛らしかったです。眼福です。   「シュネー・フリーレン。……メイドを束ねるメイド長よ」    ツンとそっぽを向き、シュネーさんは言いました。    つれない態度も可愛いです! テーブルで見えませんでしたが、メイド服もヒラヒラしてて可愛い!    にやけて手を振る私を睨み、シュネーさんは着席。    自己紹介は終わりました。司会を務めていたフルスさんは、満足げに頷きます。   「よし、これで終わったわね。じゃあ、今日は解散――」   「ちょっと待った」   「ん? まだ何かある?」    フルスさんを止めたバッケさんへ視線が集まります。    何か用があるのでしょうか? 他に話すことといえば……。   「ロウをどこで働かせるか、まだ決めてねえじゃねえか」    あ、仕事の話でしたかー。   「確かに。大切な問題ね……どうしよう」    ううむ、労働というのは初体験で不安ですが、避けるのは無理ですよね。覚悟を決めなくては。    悩むフルスさんへ、私は胸を叩きます。   「私はなんでもドンとこい! ですよ」   「受け取る側がドンとこいじゃないのよ」    そりゃ尤もです。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加