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「よいしょ……」
夜の真っ暗闇の中、フルスさんはランプを私との間に置きます。
ちょうどフルスさんを確認できるくらいの、柔らかな光が私達を照らしました。
暗闇の中にできた、温かな空間。私に光を運ぶのは、やはりフルスさんなのだと思いました。
フルスさんはランプを誇らしげに軽く叩き、微笑みます。
「星でも見てたの?」
「そんなところです」
私は答え、仰向けになり空を見上げます。
地球と変わらない星空がそこにはありました。月は二つほど浮かんでいますが、星の煌めきは変わらず空に瞬いています。
「けど、今はもう見る気がしません。星よりもっと綺麗な人が来ましたから」
「……馬鹿ね」
「真面目に言ってますよ?」
「だから馬鹿なのですわ」
ペシッと軽く額が叩かれます。ツッコミとは違って、不思議と心地よい感覚でした。
「ロウ。何か……悩み事はない?」
私の額に手をやったまま、フルスさんは訊きました。
彼女の手から伝わる体温のような、温かい気遣いが窺えます。
「特にありませんよ。なにか悩んでいるように見えましたか?」
「……お祝いの最中に抜け出したら、心配になるのが普通よ」
あ。そういえば、そんなことをしたんですよね、私。
仲間になったお祝いの、食事会をしている最中に、私はこの場所へ抜け出したのです。
フルスさんが心配するのも仕方ないですよね。
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