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「嬉しかったんです」
心配をかけて、冗談で紛らわすわけにはいきません。
私は身体を起こすと、抜け出した理由を語ろうと口を開きました。
「新しい世界に来て、一日でこんないい人達に会えて。私は……希望を貰いました」
言っていて、恥ずかしい気もします。けどまあ、普段の私の方が恥ずかしいので、これくらい我慢しましょう。
「楽しかったです。ふざけて、優しくしてもらって、ちょっと怖かったですけど、スリルもあって。体感ですが、あっという間にこの時刻です」
だから、と私は続けます。
「私は星を見ていたんです。この空のどこかに、私のいた世界が見えないかな、と思って」
「恋しいの?」
「いえ全く。けど、地球のみんなに自慢したくなりまして。『私はこんな幸せだ』と」
先の見えない闇から目を離し、私はフルスさんへ視線を向けます。
光の中にいる彼女は、きょとんとした表情をしていました。
私はそんな彼女へ笑いかけます。
「あなたのお陰ですよ、フルスさん。私を助けてくれてありがとうございます。大好きです」
「ば、馬鹿! そう軽々しく好きだとか言わないの!」
「じゃあ愛しています」
「『じゃあ』ってなによ!? いやそれ以前に愛していますでも駄目!」
「えー」
「えー、じゃない!」
私を助けてくれて、居場所も与えてくれて……本当に、嬉しいです。大好きです。
私はふざけながら、密かに決意します。
フルスさんに恩返しをしよう、と。
私は、彼女の運んだ光の中にいるのだから。
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