二章:新たな日常

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                    「朝だ! 起きろ新人!」    異世界二日目の朝は、さながら軍人のように叩き起こされて始まりました。   「あと五分……」   「何言ってるのよ。サボりは許さないぞ!」    な、なんですか。私は朝弱いと言って……。    目を擦りながら、心の中でぼやきます。徐々に意識は覚醒していき、私は部屋に飛び込んできたらしい人物を発見しました。   「はえ? シュネーさん?」   「シュネーだ。起こしに来てやったぞ」    小さな身体のメイドさん、シュネーさんは腕を組み、不機嫌そうな顔で答えます。    シュネーさんが起こしに? はて、何故でしょうか? 結婚イベントはこなしてない筈ですが。    覚醒、といってもまだまだ本調子ではありません。ぼんやり考えていると、私の手が乱暴に握られました。   「リーレンと働くんでしょ。ほら、行くぞ――」    リーレン? ああ、そんな話にもなってましたね。    段々状況が掴めてきた私は、手を引っ張られるがままに身体を起こし、ベッドから引きずり出されます。    その間も、私は身体を動かすことには意識を向けずに考えていました。    昨日は……フルスさんと話してから、広いお風呂に一人で入ったんですよね。それからこの部屋で眠って現在に、と。    ――ふむ、何か思い当たることがあるんですよね。なんでしたっけ?    回想しても記憶が曖昧なので、私は周囲に視線を巡らせます。    柔らかいそれなりの質なベッドと、棚が上についた机、それのみが置かれたこのシンプルな部屋は、私が昨日与えられた自室です。    私物はこれから増やしていきたいですね。長くここにいるかもしれませんし。今は、壁にかけられたワンピースしかありませ――あ。    思い出しました。なんでこんなモヤモヤするのか。   「……し、新人!? あんたなんで裸なの!?」    私は素っ裸で眠っていたのでした。通りでベッドから出たときに涼しいわけですよ。    私も一応は女性。光や湯気やらが身体を隠すよう祈りながら、私は素早くベッドに戻りました。嗚呼、顔が熱いです。  
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