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女の子が好きなのもありますからね。
私はマントの首元を締め、鏡へ一笑。シュネーさんへ振り向きます。
「待たせてすみません。行きますか」
「防具もつけて。防具も」
防具もですか。サイズ関係ですかね。合わないと付けられませんし。
シュネーさんに促され、私は紙袋から防具らしき物を取り出します。
窓から差し込む光を反射する、銀で作られた胸当て。片肩に掛けるタイプの物で、固くていかにも防具らしい品です。
これだけでは防具として軽装です。しかし私は素人。動けないよりはこれくらいが妥当でしょう。
「……ちょっと胸がキツいですね」
装着にやや時間をかけ、ブラウスの上に胸当てを着けます。サイズはそれなりに合ってましたが、少し息苦しさを感じました。
「けっ、自慢? それって自慢なの?」
シュネーさんはちょっと羨ましいみたいです。露骨に嫌そうな顔をして、今にも唾とか吐き捨てそうです。荒んでますね。
「自慢ではありません。我慢できる範囲ですし、これで大丈夫だと思います」
「そ。後でフルス様にお礼を言っといて」
ぶっきらぼうに言って、行くよ、とシュネーさんは私へ背中を向けました。ドアへと歩いていきます。
私も慌てて後ろを歩きます。
「あの、防具着けたままですか?」
「うん。これから戦うし」
「はー、戦うんですか――ええっ!?」
それにリーレンさんと働くこと、何の関係が!?
働く前からこう言うのもアレですけど、昨日のフルスさんの様子を考えると……嫌な予感しかしません。
お屋敷の無駄に長い廊下を、小さな背中を追いかけながら歩く私は、遺書でも書いておこうかと思案しました。
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