二章:新たな日常

7/46

98人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
   それにしてもこの統率――メイド長だという自己紹介は本当でしたか。    ただ聞くだけではとても信じられませんでしたが、こうして長らしいところを目の当たりにすると、疑い様がありません。    何歳なのか本格的に気になってきました。しかし女性に年齢を聞くのは失礼ですし……。   「ちょっと早いけど、今日の訓練はここまで。みんな、お疲れさま」   『はい!』    皆さんからそれぞれトーンの違った言葉が返されます。    途端に張り詰めていた空気が緩みました。皆さん、充実感に満ちた表情をしています。    軍隊から、いきなり部活動へ変化するような空気の落差がありました。   「訓練は終わったけど、続けてお知らせするぞ。こいつは昨日入った新人のキリサキ・ロウだ」    シュネーさんはそう言って、私の脇腹を軽くつつく。    言わずともそれだけで分かりました。自己紹介ですね。   「キリサキ・ロウです。昨日からシュネーさんの夫としてここに来ましたうあ゛っ」    シュネーさんの拳が、私の腹部を綺麗に捉えます。威力は軽く唸る程度でしたが、フルスさんより容赦ないです。    笑顔のまま腹部を押さえ、私は自己紹介を続けます。   「すみません。お嫁さんも彼女も現在いません。可愛い方募集中です……」    嗚呼、皆さんの苦笑が心に滲みる……。    ダメージは若干ありますが、これで私という人物を大体理解いただけたでしょう。   「はいどうも。というわけで、こいつの相手をできる人いるー?」    肉体的にはツッコミしてくれるのに、残酷なほど言葉では相手をしてくれません。シュネーさんは冷たいアナウンサーのように短く礼を述べ、皆さんへ声をかけます。    流されるのが一番堪えるんですよね……。その点フルスさんは、本当にからかい甲斐があります。   「はい。僕はどうですか?」    シュネーさんに応え、手が一つ挙がりました。    手を挙げたのは、昨日話したクロイツさんです。優しい人です。自分から進んで出てきてくれるとは。   「却下。クロイツは強すぎる」    しかし一秒もしない内に断られる辺り、彼らしいと言いますか。    ――っていうか、クロイツさん強いんですか。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加