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新たなる事実です。クロイツさんはどう見ても、私と同じような平均人間なのに。
人は見かけによらないとも言いますし、あながちおかしくもないですが……。
仲間が一人減ったかのような虚無感が胸を突きます。まことに身勝手ですが……クロイツさんの裏切り者っ。
「他にいない? いないなら、あたしがやることになるけど」
シュネーさんが問いかけても、皆さん黙り。手を挙げる気配はありませんでした。
皆さんいい人そうなのに。あ、まさかクロイツさんくらいの実力は、当たり前レベルなんですかね。で、ちょっと弱い方は忙しいとか。
もしそうなら、頼もしい限りです。魔物に襲われても被害は出ないでしょう。
最悪、この異世界の全員が強者レベルという、カオスな状態に陥りますが。
「仕方ないか。よし新人、お前の力を私直々に見てあげる」
誇らしげに、そしてかなり楽しそうにシュネーさんは宣戦布告しました。
ふざけた私を叩きのめす大義名分が手に入ったのです。かなり嬉しい筈。
不敵な笑みを浮かべた彼女からは、微かに殺気の香り。手加減はしない。シュネーさんの目が私へ語りかけます。
「ふ……いいでしょう! 存分にやられてみせます!」
「何言ってんの?」
間違ったみたいです。きょとんとしたシュネーさんの反応に、私は握った拳を静かに降ろしました。
なんでしょう、この私が決めにいくと外れる流れは。主人公としてかなり致命的ですよね。
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