二章:新たな日常

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   槍を握る手に自然と力が入ります。私は今、一人の人間と対峙している。魔物と違った緊張感がありました。    下手したら人の命を奪ってしまうかもしれません。注意しないと。   「ふざけてる割には、意外と構えはいいのね」    シュネーさんは細長い剣、レイピアのような物を持っていました。    彼女は左足を下げ、右足を前に、半身にして剣の切っ先を下げ、緩く構えます。    やたら形式的な構えですが……これは、逆にレイピアの類いを使い慣れていないと見えます。素人目線でも、構えをとるまでに時間がかかっているとはっきり分かりました。    それ故か、彼女からは威圧感というものがありません。    得物を手に向かい合っても、緊張感以外には何もないのです。   「いいよ、来ても」    メイド長である以上、彼女もまた実力者である筈。しかし脅威を感じとれないのは何故か。    若干の疑問はありますが、気にしていても仕方ありません。誘われるがまま、私は走り出します。    不敵な笑みを浮かべたシュネーさんは、構えをとったまま動きません。    とりあえず、一撃。   「はっ!」    肉薄し、シュネーさんを間合いに捉えると、私はすぐさま槍を突き出します。    予備動作なしの地味な攻撃ですが、直撃すれば容易く致命傷を与えるでしょう。    槍の先、尖った刃がシュネーさんに迫ります。    もう少しで直撃。あわや殺人かと思った――その時。    歴然とした変化が現れました。    目の前の幼女、シュネーさんから感じるのです。    私の命を奪わんとする、濃い殺気を。   「え!?」    私は目を疑いました。まさに一瞬の出来事。    緩く構えられていたレイピアが跳び跳ね、槍の切っ先が上を向いたのです。不快な甲高い音が耳に入ります。    ――見事に弾かれました。    槍が上を向くことで、私は腕を前に出して突っ立つ、間抜けな人間と化します。    そこへ、シュネーさんは驚くべき速度で接近してきます。レイピアを引き寄せ、次なる攻撃にも既に備えていました。    やられる。私の脳裏にシンプルな一言が浮かびます。    槍を下に戻しても、棒状の武器で刺突を防ぐのは至難の技。それ以前に、手が痺れてて戻せるかすら……。  
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