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ここはシンプルに火属性を選びましょうか。いや、王道ならば光とかいいかもしれません。
よし、そうしましょう。
「光属性でお願いします」
拳をグッと握り、意気込んで答える。
光属性は好きなので嘘ではありません。回復、補助、攻撃をこなす万能役ですし。
「光、だね。なるほど……面白い」
何が面白いのでしょう。
ちょっと引っかかる言い方ですが。まあ、笑顔を浮かべていますし、純粋に面白い……と思うことにしましょう。
謎の人物はにこやかに笑って、私へ頭を下げた。
「分かった。君に聞きたいのはこれだけだ。協力ありがとう」
「あ、もう終わりですか? 性癖とか聞いてくれないんですか? 男だらけの世界とか嫌ですよ?」
「僕の世界は君を歓迎するよ。君は常識の違いに困るかもしれないけど、いいところだからすぐ慣れると思う」
無視。
右から左なんて生易しい流し方じゃありません。
ギャグでしたからスルーも一つのツッコミとしますか。
ふむ……。私は話の流れを整理し、疑問を口にする。
「しかし、やっぱり異世界なんですか? あ、転生じゃないですよね?」
「大丈夫。君の記憶にある世界とは違う世界に行くだけだよ。死んだわけじゃない」
異世界モノですね。
なるほど、転生はちょっと重いですからね。一回死んでるわけですし。
そういう心配りは嫌いじゃないですよ。
「……さて、じゃあそろそろお話は止めようか」
変化はすぐやってきました。またもや曖昧になる視界と意識。
私は目の前の人物をすぐ見失います。
「君の幸運を祈っているよ。頑張ってね」
優しく、それでいてどこか他人事な響きの言葉。
そんな謎の人物の言葉を耳に、私もまた、自分に幸あるよう祈るのでした。
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