二章:新たな日常

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   防御は無理です。ならば――避ける。    我ながら呆れるほどシンプルですが、状況を打開するにはそれしかありません。    師は言いました。相手の武器をしっかり見ろ、と。私はその言いつけ通り、シュネーさんのレイピアを凝視します。    先が鋭く、刃も一応付いています。刺突、それに加えて振って、何かを切ることもできそうです    しかし今、刺突以外の攻撃はこないと見ていいでしょう。    シュネーさんはレイピアを引いています。引き絞るようにして、攻撃に備えているのです。    となれば、後は溜めた力を放つのみ。真っ直ぐこちらを突いてくる筈です。    もしこの予想が外れても、私の槍があります。刃は遠くて使えませんが、柄くらいならすぐ防御に使えます。    細長い武器の欠点は脆さ。シュネーさんでも迂闊にレイピアを振るえまい。    故にここは刺突を意識して横――いや、斜め前に回避しましょう。    思い立ったが吉日。私は覚悟を決めて一歩前に進みます。    シュネーさんが接近してくる前で、無謀にも思える行動。考えた上でやっているのに、とてつもない緊張感が私を襲います。    もう止めたいけど……ここからです。ここで生きるか死ぬかが決まります。    槍を自分で上に立て、私はシュネーさんの武器を、肩を見ます。    挑発は成功したようです。私の進行から一瞬遅れて、肩が僅かに動き、刃先が揺れました。    攻撃の前兆。自ら間合いへ入った私へ、研ぎ澄まされた一撃が今にも放たれようとしています。    私はそれを確認してから、斜め前に軽く跳躍。痺れる手をなんとか動かし、柄を下へ下げます。    それとほぼ同時、最早紙一重のタイミングで、背筋が震えそうなほど鋭い風切り音を立て、レイピアが私の横を通過しました。    回避成功。シュネーさんの横をとりました。しかし、気は抜けません。    まだ、シュネーさんから殺気を感じられます。突きを放ったときと同じような、濃厚な殺気を。    私は柄の位置を下げた槍、それを左右の手で間を空けて持ちます。    横へ振られたレイピアを防ぐために。  
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