二章:新たな日常

18/46

98人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
   ざわざわとした人の気配がなくなり、街からは何かの汽笛が聞こえます。    遠くに賑やかさを感じ、けれどもかつて活気に満ちていた私達の周りには、無音に近い空間が展開される。    まるで活気という波が立ち、遠くへ流れていくようです。    明日の朝には庭へ波が戻り、そして再び流れていくのでしょう。訓練が毎日行われるなら、の話ですが。    私は珍しく真面目な顔をして、物思いに耽ります。    無意識に髪へ触れ、嘆息。    ……残ってしまいました。皆さん、お屋敷に帰ったのに。    でも仕方ありません。解散と言われても、私には行く当てが部屋以外にないのです。    無論、部屋に戻っていいとは思いません。仕事があるのですから。    だからこの場に留まったんですが……あのまま指示に従って、私もお屋敷に戻った方が良かったんですかね?    沈黙が長い故、微妙に心配になります。   「ロウ君」   「ふぇ!? あ、はい! 何ですか?」    急に声をかけられて、奇声を発してしまいました。背筋をピンと伸ばし、私は反射的に応答。それから一瞬の間を空けて、我に帰ります。    呼びかけに反応して返事を返す。それを無意識に行える特技が、私にはあります。   「ご苦労様。シュネー君も言っていたが、君の動きは素晴らしいな」    リーレンさんが髭を触りつつ、ダンディに賞賛のお言葉をかけてくれました。    残ったのは間違いじゃなかったみたいです。一安心。   「そうですね。僕も驚きました。今度一回戦って下さいね」    続いてクロイツさんからも嬉しい台詞を頂きます。    ふむ、これはまさか……私って強い?    ちょっと調子にのりはじめる私へ、シュネーさんが軽くボディを入れました。   「言っておくけど、あたしが一番弱いぞ。槍使った状態で」    ……まあ、物語の展開的に分かってなかったわけでもありません。    四天王の一人と戦って、「奴は最弱……」みたいなことなんて、日常茶飯事ですし。そもそも敗北を喫した初戦の次に、また強い人と戦うなんて鬼畜ですし。    だけどちょっとは、私つえーしたいんです。そういうお年頃なんです。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加