二章:新たな日常

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           屋敷の門を出て路地を歩くこと十分。比較的近くに、目的地はありました。   「『フルミネス商会工房』」    入り口横に掛けられていた、看板らしき物を読み上げます。    その看板の後ろには大きな家がありました。屋敷よりは小さく、石造りなので見た目も劣りますが、なかなか味のある建物です。頑丈そうですし、狼にも勝てますね。    ここが商会の工房ですか。お屋敷と別に、こんな立派な場所があるとは。    商会の規模に改めて感心しながら、辺りを見回します。    我が商会の他にも、この周囲には似たような工房があるようで、頑丈そうな家々が多く立ち並んでいました。    そのお陰で、あちこち物音で賑やかです。ここにいれば、たとえ一人でも、寂しい思いはしなそう。   「ここが商会の商品を造る工房だ。バッケ君が担当している――のは昨日聞いたか」    リーレンさんは看板の横に立ち、工房の入口を見ながら紹介しました。    彼の声は小さい方なのですが、物音のある中でもよく通ります。   「中に入ったら、防具と武器を外すといい。仕事の邪魔になるかもしれない」   「あ、はい。分かりました」    ここに来るまで、すっかり買い出しに行くものだと思い込んでましたが――この工房でどんな雑用をするんでしょうか?   
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