二章:新たな日常

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  「そうか? なら、選んだ甲斐もあるもんだ」    バッケさんが嬉しそうに笑います。    十分という短い時間ですが、寝る間も惜しんで考えたらしいですし、やはり無下に却下はできまい。    彼の笑顔を見て、私は考えます。着るだけで少しでも喜んでくれるなら、やらない手はありません。   「それにしてもロウは……」    話題の転換。笑顔から一変して、真面目な表情をしたバッケさんが、視線を少し下へ向けました。    はて、なんですか?    「大きいな。本物か?」    なんて正直にものを言う人なんでしょう。ここまで直視されて、ストレートに言われたのは初めてです。セクハラ発言な筈なのに、爽やかさすら覚えます。    言った直後にバッケさんがリーレンさんから殴られてましたし、気分も悪くありません。   「いってぇ……いいじゃねえか、別に。気になったんだ」   「だからといって直接訊くのは馬鹿だろう。商会を追い出されても文句は言えんぞ」    ため息混じりに言うリーレンさん。見た目通りの紳士さんです。    私は苦笑いを浮かべて、バッケさんに言います。   「シュネーさんなら知っているかもしれません。あの人、私の全てを見ましたから」    ふっふっふ。なんてナイスな返し。    シュネーさんはプライドが高い方。大きいなどと素直に答えはしないでしょう。私の名前を出しただけで怒る可能性も、皆無ではありません。    ぶりっ子ぶるよりは、こうしてシュネーさんをからかいつつはぐらかすのがベストでしょう。    意味深ですが嘘は言ってませんし。    と、私はほくそ笑むのですが。   『!?』    ガタガタとあちらこちらから椅子の音が立ちました。    ど、どれだけの人が盗み聞きをしてたんですか……。  
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