98人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか? なら、選んだ甲斐もあるもんだ」
バッケさんが嬉しそうに笑います。
十分という短い時間ですが、寝る間も惜しんで考えたらしいですし、やはり無下に却下はできまい。
彼の笑顔を見て、私は考えます。着るだけで少しでも喜んでくれるなら、やらない手はありません。
「それにしてもロウは……」
話題の転換。笑顔から一変して、真面目な表情をしたバッケさんが、視線を少し下へ向けました。
はて、なんですか?
「大きいな。本物か?」
なんて正直にものを言う人なんでしょう。ここまで直視されて、ストレートに言われたのは初めてです。セクハラ発言な筈なのに、爽やかさすら覚えます。
言った直後にバッケさんがリーレンさんから殴られてましたし、気分も悪くありません。
「いってぇ……いいじゃねえか、別に。気になったんだ」
「だからといって直接訊くのは馬鹿だろう。商会を追い出されても文句は言えんぞ」
ため息混じりに言うリーレンさん。見た目通りの紳士さんです。
私は苦笑いを浮かべて、バッケさんに言います。
「シュネーさんなら知っているかもしれません。あの人、私の全てを見ましたから」
ふっふっふ。なんてナイスな返し。
シュネーさんはプライドが高い方。大きいなどと素直に答えはしないでしょう。私の名前を出しただけで怒る可能性も、皆無ではありません。
ぶりっ子ぶるよりは、こうしてシュネーさんをからかいつつはぐらかすのがベストでしょう。
意味深ですが嘘は言ってませんし。
と、私はほくそ笑むのですが。
『!?』
ガタガタとあちらこちらから椅子の音が立ちました。
ど、どれだけの人が盗み聞きをしてたんですか……。
最初のコメントを投稿しよう!