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「さて、ではロウ君にはフィコ君と呼び込みに行ってもらおう。店番は私が引き受ける」
呆れ顔で言って、リーレンさんはカウンターに向かいました。店番を一人で……できるものなんですか?
まあ、ここは彼に任せておきましょう。私達は外で働きますか。
フィコさんという美しい華は、やっぱり人目につくところにいるべきですよね。
「行きましょう、フィコさん」
「うん。ロウちゃんと一緒にお仕事できて嬉しいなぁ」
かわえぇ……。ほんわかした雰囲気を放つフィコさんは、柔らかく笑って、お店の外へ。大通り近くのドアから出ていきます。
カラン、とドアベルの心地よい音。外に出ると、何を言っているのかハッキリ分からない、ガヤガヤとした声たちが聞こえてきました。
昨日と同じく大盛況。色々な人達が、あちこちで賑やかに騒いでいます。活気の体現というべき光景です。
……さて。何をするんでしょう? 呼び込みというのはあまりしたことがないんですが。
お店の前に立ち、私は隣の先輩を見つめます。
「呼び込みだから……えい」
すると、おもむろに私のマントを剥ぐフィコさん。な、なんです?
「フィコさん? 何してるんですか?」
「人目を引こうかな、って。あ、ロウちゃんにはちょっと露出のある衣装とか似合うかも――」
「さ早速仕事しましょうか。リーレンさん暇しちゃいますし」
フィコさんが不穏な台詞とともに笑顔を浮かべたので、慌てて仕事人へシフト。去らばふざけた私。
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