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何の前触れもなく、いつも通り私は目を覚ましました。
目に映るのは青い空。天井があるべき場所は、世界の広大さを語っていました。
嗚呼、なんていい目覚め――
「って馬鹿ですか!」
同時に、私が外で寝ているという要らない事実も気づかせてくれます。
私は慌てて身体を起こす。
爽やかに身体へ触れる風。緑の香りを私の鼻へ届け、心地よい音が耳に入ります。
草原でした。草原の真っ只中で私は寝ていたようです。
いつから私は野生に帰ったというのか。
「えーと……?」
……はて。真面目に分かりません。
寝起きは弱いんですよね、私。頭がぼんやりして思考がまともにできません。
なんか、異世界がどうとか――
「え!?」
のんびり思考をはじめた頭へ、大きな音が響いてきました。
慌てて振り向くと、そこには複数の何か。
緑が鮮やかな草原に立つ、うようよと蠢く半液体状の生物。俗に言うスライムというやつでしょうか。
六体ほどのそれらが、私の後方から音もなく近づいています。
「……まずいですよね」
のんびり考える時間はないようです。
いくら雑魚の定番とはいえ、一般人の私が敵う筈ありません。
私は勢いよく立ち上がり、そしてある異変に気づきました。
まず服装。白いワンピースです。ヒラヒラしてて、やたら弱そう。無地効果で貧相さはさらにアップです。軽いダサい薄い。とにかく戦闘には向いていません。
そして装備。私はいつの間にか剣を背負っていました。
革の鞘にしまってあるそれは、私の身長の半分程度の長さ。七十センチ程度でしょうか。
ゲーム定番装備の片手剣です。
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