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……気のせいですよね。深く考えるのは後にしましょう。
「そうですね。元の世界では銃が沢山あって、性能もあれよりいい物が数多くあります。だから――多分、平和じゃないんでしょうね」
「でも、さっきは平和だ、って」
「私のいたところがそうだっただけです。日本はそういうことを気にしなくても、生きていける国でした。
けど、地球では一日何人死んでいるやら……」
私は肩を竦めて言います。ファンタジー成分皆無で、人がバッタバッタ死ぬ世界。その中でのほほんと暮らしてきた私達。
話で聞くだけでは、とても想像できない光景でしょう。
「そう……。やっぱり、銃は怖いな」
「ですね。それで、何故こんなことを聞いたんですか?」
私が尋ねると、ようやくシュネーさんはこちらを見ました。
ゆっくり顔を上げ、私へ向けます。彼女は怯えるような顔をしていました。
「今はフルス様しか銃を持っていない。だから安心だけど、誰かが手に入れて、銃の技術を解明したら……」
なるほど。そういうことでしたか。
……怖いですよね。怯えても仕方ありません。
「大丈夫です。銃が異世界にくる可能性なんて、一割にも満たない筈。気にするだけ損ですよ。
もしそうなっても、私が皆さんの盾になりますから大丈夫です」
貫通するかもしれませんが、そういう現実的な意見は下げておくとしましょう。
美少女のために死ぬなら本望。胸を張って私がそう言うと、シュネーさんはおかしそうに笑いました。
「やっぱり馬鹿。けど、ありがとう。ちょっと楽になったわ」
「そうですか。まあ、盾云々はともかく、気楽に構えることです。疲れていたら、いざというとき動けませんからね」
「新人のくせに生意気だぞ。それぐらい分かってるよ」
元気になってくれたみたいですね。私は安心して手すりの掃除を再開します。
異世界。地球。銃。シュネーさんの台詞を聞いたとき、私がふと抱いた疑問は何だったのでしょうか。
何かピンときたような……。
モヤモヤした思いをしながら、綺麗な手すりを磨き、私はあのときのことを延々と考えました。
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