二章:新たな日常

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  「一応鍛えてますから。けど全ての仕事を手伝うなんて、びっくりしました」    フルスさんの近くで立ち止まり、世間話。彼女も時間があるらしく、歩みを止めました。   「そうね。リーレンは完璧に近い人だからできるけど、普通ならついていくのも難しいのよ」    やっぱり……あれは過酷ですよね。フルスさんも顔だけじゃなくて、口で言ってくれればいいのに。   「つまり、あの仕事のサークルに耐える私は一般人じゃないということですか」   「そうなるわね。流石は異世界からやって来た人間、ですわ」    優雅な口調で言い、フルスさんは髪をかき上げます。    ああ……なんかいい匂いが鼻に。花とか石鹸みたいな、強くなくほどよい香りです。フルスさん、女の子です。   「ロウはまだ仕事中かしら?」   「はい? ちょうど今終わりましたけど」    匂いを嗅ぐのを止め、頷く私。フルスさんは私の言葉を聞くと、嬉しそうに笑いました。クンカクンカしてたのはバレていないようです。   「そ。じゃあ、良かったら今から出かけない? 昨日街が気になってたみたいだし」    ほお……フルスさんはツンデレタイプかと思っていましたが、こうも素直に主人公を誘うとは。    なるほど、そういうタイプも嫌いじゃないです。   「是非お願いします。かなり暇していましたので」    笑顔を返しつつ、私は着々と進む攻略に内心喜びます。    たった二日目でデートイベント。これは仕事を頑張った私へのご褒美だとしか思えません。    ふふふ。ここは更なる好感度稼ぎを行なうとき。    意気込む私。けれども――   「ふふ、タイミングが良かったわね。すぐ行くわよ」    フルスさんの元気な笑顔を見ると、そんな邪な思いはなくなってしまうんですよねー。    いかに自分が汚れているか……。  
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