二章:新たな日常

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   それからフルスさんは全く喋らなくなりました。大通りをずっと真っ直ぐ進んでいく最中も、キリリとした目で前方を見たまま。    不安も心配もなさそうでしたが、彼女の横顔はどこか物憂げでした。    どうにもならないことを悩むでもなく、ただ思い出して考える。私の友人も、そんな顔をしている時期がありました。    ……見守るしかありませんね。    出会ってたった一日の人間が、個人の領域に容易く踏み込んではいけません。思い悩んではいないようですし、ここは黙っておきましょう。    私も前を向きます。すると私達の前方に、円形の広い場所が見えてきました。    大通りとは別の場所みたいです。中心に噴水があり、その周囲にはベンチ。涼しげな雰囲気を、所々に植えられた木々がさらに強調します。    広場、でしょうか。大通りとは打って変わって人が少ないです。   「この先が中央広場よ。ここから東西南北の通りへ行けるわ」    黙りだったフルスさんが口を開きました。いつも通りの様子で、微笑みを浮かべています。   「中央広場ですか。人が少ないですけど、本当に中央なんですか?」    私はちょっと安心して訊きます。   「商業の都市だから。休む場所なんて自分の店で充分だし、来訪者は宿で休むか、すぐ取引する街へ向かう。広場なんて縁がないのよ。この場所は店を出すのも禁止されてるし」   「そういえば……確かに」    広場に目立つものはありません。この場所しか、といったものがなく、味気ない場所ですね。    ここだけ街から隔離されているような、不思議な感じです。賑やかな外の中心――台風の目みたい。   「ゆっくりするならここよ。時間を潰すならあちこち歩くだけで足りるしね」    苦笑するフルスさんはそのまま進んで、広場のベンチに座ります。    商業を売りにしている街ですし、冷やかしするだけでも一日くらい消費できそうです。  
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