二章:新たな日常

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  「他にも色々と休める場所はあるけど、ここは一番近いから」   「そうですね。ここでご飯を食べるのもいいかもしれません」    答えながら、私は彼女の後ろへ。するとフルスさんが不思議そうな顔をしました。   「なにしてるの?」   「いえ、一応下っ端ですし社長に敬意を、と」    面接でもいいと言われるまで座ったら駄目でしたし。    あっけらかんと返答する私に、フルスさんは嘆息。手招きをします。   「一応も何も今更ね……。そんなこと気にしないで、あなたも座りなさい」    今更といえば、確かに今更です。フルスさんはそれほど上下関係に執着していないようですし、気にすることもないでしょう。    私は頷いて、座りました。   「……なにしてるの?」    フルスさんの上に。    ひきつった笑みを浮かるフルスさんは、先程と同じ台詞、全然違うトーンで私へ問いかけます。   「いや、だって座れって言うから……」   「ベンチの上でしょ! 普通は! 油断するとこうなんだから!」   「まあまあ、そう怒らずに」   「くっつくなっ!」   「ですよね!」    恋人がイチャつくようにフルスさんへ密着。しかし叩かれてしまいました。    くそう、言葉の隙を突いただけだというのにこの仕打ち……。私が完全に悪いんですけどね!    反省しなくては。座りなさいと聞いたら、つい反応してしまいました……。    敢えなく退散。フルスさんの横に座ります。木のベンチは座り心地もそれなりにいいのですが、やはり冷たい。フルスさんの膝は柔らかくて暖かかったのになぁ。    憂鬱そうなフルスさんを見ながら、そんなことをのんびり考えます。   「やっぱりロウには敬意なんて無縁な言葉よ。無遠慮というか……はぁ」   「フルスさんが好きなので仕方ありません。ボディタッチも無意識の内ですから」   「しれっと真顔で犯罪者染みたこと言わないでくれる?」    言った後に自分でも思いました。    またため息を一つ吐くフルスさん。けど、それほど嫌そうな顔はしていません。    むしろ楽しそうにしているような。私の勘違いかもしれませんが。  
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