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その日の夜も、星は空で綺麗に輝いていました。
美しく、科学は欠片くらいしか見当たらず、月明かりが柔らかく辺りを照らす……幻想的な風景。
私は今日知ったテラスの上で、それを見ていました。
地球では見られない景色。
そう思うほど、私の胸は苦しくなります。
未練はないと言いつつも、多分本当は恋しいんだと思います。
だって、未練はなくとも、思い出はありますから。
未練は消費し、持ち運ぶこともできます。けど思い出はそうはいきません。
私の中に存在しながら、思い出が生まれた場所にも存在するのです。
難儀なもの。
人間とは、一生割りきれない生き物なんだと思います。
「地球……お味噌汁は恋しいですかねぇ」
だからこそ、毎日が楽しいわけで。
この苦しさも、日々のスパイスと受け取りましょう。
私はいつも通り暢気に考えて、欠伸をしました。
……眠い。そろそろ寝たほうがいいですね。
自室は二階。テラスからは結構近いです。明日も仕事ですし、夜更かしをするわけにはいきません。私は片足を軸にクルッと百八十度回転。
出入口の窓に向かい――
「あら」
奇遇にも、テラスへ入ってきた人影を見つけます。
細身な人影はゆっくりとこちらへ。徐々に月明かりの照らす中へ。
「こんばんは。こんな場所で少女が一人、夜更かしかね?」
現れたのは眼鏡をかけた老人……リーレンさんでした。
相変わらずのダンディな声で、冗談っぽく言います。
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