三章:真夜中の来襲者

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           不眠、というものは総じて敵だと思います。    彼らは遠足、文化祭、受験――大切なイベントの前日になると症状を出し、私たちを苦しめます。    いつもはぐっすり眠っているのに、大切な日の前に限って眠れなくなる……この迷惑な症状に何度苛ついたことか。    私は本番に弱い人間だと多々言われますが、大抵は前日の不眠に原因があります。       「……眠れない」    今夜もまた、私はその対策仕様がない症状に悩まさていました。    寝心地のいいベッドの中で何度も寝返りを打ち、時折壁に膝をぶつけてしまったり、とにかく眠いとは微塵も感じません。    不眠になった原因はおそらく、皆さんの思わせ振りな伏線発言の数々。    これから主人公である私はどんな困難に直面するのか――考えただけで眠れなくなります。自分を主人公だとか思い込んでますが、デリケートなんです。   「命を奪う……」    私は小さく呟きます。    今まで普通の生徒だった私に、命云々はとても重い話です。    命に関わるトラブルなんて、事故くらいしかありませんでしたし。    あっという間に乗り物が人間の命をかっさらう――それが、人間同士になっただけでこうも違う。    どちらが残酷なんでしょう? 私には答えられません。    命は尊きもの。大切な人でも、野盗でもそれは変わりない筈。    それは……甘い考えなのですか?    自問自答。しかし答えは出ません。    まだまだ考える時間が必要そうでした。  
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