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不眠、というものは総じて敵だと思います。
彼らは遠足、文化祭、受験――大切なイベントの前日になると症状を出し、私たちを苦しめます。
いつもはぐっすり眠っているのに、大切な日の前に限って眠れなくなる……この迷惑な症状に何度苛ついたことか。
私は本番に弱い人間だと多々言われますが、大抵は前日の不眠に原因があります。
「……眠れない」
今夜もまた、私はその対策仕様がない症状に悩まさていました。
寝心地のいいベッドの中で何度も寝返りを打ち、時折壁に膝をぶつけてしまったり、とにかく眠いとは微塵も感じません。
不眠になった原因はおそらく、皆さんの思わせ振りな伏線発言の数々。
これから主人公である私はどんな困難に直面するのか――考えただけで眠れなくなります。自分を主人公だとか思い込んでますが、デリケートなんです。
「命を奪う……」
私は小さく呟きます。
今まで普通の生徒だった私に、命云々はとても重い話です。
命に関わるトラブルなんて、事故くらいしかありませんでしたし。
あっという間に乗り物が人間の命をかっさらう――それが、人間同士になっただけでこうも違う。
どちらが残酷なんでしょう? 私には答えられません。
命は尊きもの。大切な人でも、野盗でもそれは変わりない筈。
それは……甘い考えなのですか?
自問自答。しかし答えは出ません。
まだまだ考える時間が必要そうでした。
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