98人が本棚に入れています
本棚に追加
できるだけ最短距離で階段へ向かう。先程の爆発音などなかったかのように静かな廊下を、全力で疾走します。
ランプも消えており、廊下は月明かりしか入ってきません。記憶と勘を頼りに、右折。すぐ前に階段が見えました。
……確か音は下から聞こえた筈です。
私は腰の剣を見やり、頷く。いざとなれば戦えます。
「よっ」
階段は暗くて足を踏み外すかもしれません。そこで私は、階段の手すりに座るようにしてグラインド。滑っていきます。
なんとかバランスを保って着地。一階に到着しました。
階段を降りた先はエントランスです。ランプが一つ壁に掛けられており、二階よりは明るいので助かりました。
息を整えながら周囲を確認します。
何も異変は見当たりません。エントランスの先にある玄関の扉も、普段通りでした。
はて。勘違いでしたか?
拍子抜けする私ですが、ふと近づいてくる気配に気づきました。
同時に、足音も耳に入ります。
「誰ですか!」
腰の剣を抜き、音のする方へ叫びました。
しかし返答はなく、足音が近づいてくるのみ。私の声に少しも歩調が乱れることはなく、規則正しく歩みをこちらへ伝えます。
これは本当に敵かもしれません。
足音が近づいてくる。自分から向かうわけにもいかず、私は剣を構えて待ちます。
ただそれだけなのに、言い様のない緊張感が私を襲い、一分にも満たない時間が長く感じられました。
やがて、息が切れそうな空気の中、足音の主が現れました。
最初のコメントを投稿しよう!