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「なんて言ってる場合じゃないですよね」
ため息を吐く。
今は戦闘。読者云々とか、わけの分からない発言をしている場合じゃない。
手にした剣を構え、私はジリジリとスライムへ近づきます。
トロいスライムと、足だけ動かして進む私。二十メートルの間を詰めるのは、何時になるのか。シュールな戦いが幕を開けました。
と思いきや、突然跳躍するスライム。一匹がぴょいぴょいと跳び跳ね、すぐ私の近くへやって来ました。
「うわ!?」
反射的に声を出し、構えていた剣を前に突き出す。スライムのアクティブさが、思いの外不快だったのです。
粘着性に富んだ水音と共に、軽い手応えが。ゲルの入ったシャーペンのグリップに、針を刺したような、微妙な感覚です。
偶然にも、私は接近してきたスライムを串刺しにしていました。
驚く私。剣で貫通されたスライムは、地面に力なく落下し、消えてしまいました。あの身体を剣で刺されて、一体何が効いたのやら。
「なんかイマイチ迫力に欠けますね」
一体倒したのに、なんというテンションの低さ。
剣を軽く払い、嘆息する。残りは五体。あと五刺しです。楽勝すぎ――
「あいたっ!」
身体に衝撃が走り、私は地面を転がりました。
何回転かして、ようやく止まる身体。う……苦しい。お腹、お腹です。お腹をやられました。
幸い吐き出すものが無いので、存分に咳き込むことができます。
ゲホゲホとやりながら、私はスライム達のいた場所へ身体を向けます。
私がさっきまでいた場所には、黄色のスライムがいました。
いつの間に……。ほぼ無音で跳ねるから、全然気づきませんでした。
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