一章:遭遇

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  「なんて言ってる場合じゃないですよね」    ため息を吐く。    今は戦闘。読者云々とか、わけの分からない発言をしている場合じゃない。    手にした剣を構え、私はジリジリとスライムへ近づきます。    トロいスライムと、足だけ動かして進む私。二十メートルの間を詰めるのは、何時になるのか。シュールな戦いが幕を開けました。    と思いきや、突然跳躍するスライム。一匹がぴょいぴょいと跳び跳ね、すぐ私の近くへやって来ました。   「うわ!?」    反射的に声を出し、構えていた剣を前に突き出す。スライムのアクティブさが、思いの外不快だったのです。    粘着性に富んだ水音と共に、軽い手応えが。ゲルの入ったシャーペンのグリップに、針を刺したような、微妙な感覚です。    偶然にも、私は接近してきたスライムを串刺しにしていました。    驚く私。剣で貫通されたスライムは、地面に力なく落下し、消えてしまいました。あの身体を剣で刺されて、一体何が効いたのやら。   「なんかイマイチ迫力に欠けますね」    一体倒したのに、なんというテンションの低さ。    剣を軽く払い、嘆息する。残りは五体。あと五刺しです。楽勝すぎ――   「あいたっ!」    身体に衝撃が走り、私は地面を転がりました。    何回転かして、ようやく止まる身体。う……苦しい。お腹、お腹です。お腹をやられました。    幸い吐き出すものが無いので、存分に咳き込むことができます。    ゲホゲホとやりながら、私はスライム達のいた場所へ身体を向けます。    私がさっきまでいた場所には、黄色のスライムがいました。    いつの間に……。ほぼ無音で跳ねるから、全然気づきませんでした。  
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