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日本刀の鋭い切っ先が、私の首目掛けて迫ってきます。
このままでは一撃でやられる。あっさりと。
焦り出す私。しかし日本で行ってきた特訓の経験が、冷静な思考をもたらします。
何かしなくては。剣は使えないから――格闘です。それも、すぐ体勢を崩せるような技。あれしかありません。
「やらせません!」
キッと目を鋭くさせ、私は床すれすれで足払いをしかけます。同じタイミングで着物の少女の肩に手を添え、横に押す。
身体の中心を軸にした攻撃。一連の流れが綺麗に決まり、着物の少女は転倒しました。手が解放され、日本刀は私の前を通過します。
状況は好転。このまま倒れた相手を踏みつけ――ようとしますが、それは踏み止まります。
下手すれば内臓が破裂しかねません。あくまで戦闘不能。殺す気はないのです。
「くっ……」
となると、倒してからの追撃手段はありません。私は歯噛みしながら後ろへ。剣を構えて様子を見ます。
加減して戦う。それは格下相手にのみ通用する戦い方です。果たして彼女と私に、それほどの差があるのか……。むしろ、総力では負けている気がしてなりません。
けど、やらなければ死ぬだけ。命の危機が迫れば……奪うことも考えましょう。
「……」
着物の少女は私が離れるとゆっくり、かつ止まることなく立ち上がりました。
転倒させただけでは、ダメージは皆無。彼女の動きには支障を一つも感じさせません。
仕切り直し。互いにダメージはなく、私達は再び対峙します。
今度は先手をとるとしましょう。着物の少女が行動する前に、私は剣を少し下げ、肉薄します。
そして一閃。間合いに入ってすぐ、横へ剣を振るいます。
しかし着物の少女は動きません。日本刀は下げたまま、構えすらとっていませんでした。
結果、剣は命中。彼女の着物を裂き、腹部を引っ掻く程度に切ります。
――浅い。切りにかかっていたのに、圧倒的に踏み込みが足りない。もしくは、腕を伸ばしていないのか。どちらにせよ、私の意思でないのは確かです。
やはり無意識の内に私は加減を……。
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