三章:真夜中の来襲者

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   信じられません。なんていいタイミングで、助けに来てくれたのでしょう。    いつ来たかは分かりませんが、助かりました。流石フルスさんに完璧と言わせたかとはあります。    感謝しつつ、体勢を直します。着物の少女は――いました。リーレンさんの前です。    先程の音は多分、リーレンさんが着物の少女の刀を弾いた時のものでしょう。着物の少女はリーレンさんの少し前、刀の届かない範囲にいました。相変わらず日本刀を下げており、ぼんやりと虚空を眺めています。    お面も相まってとても不気味に見えました。   「ロウ君。ここは引き受ける。君は地下へ行きたまえ。すぐ後ろの階段から行ける」    私の無事を確認し、顔を前に向けるリーレンさん。私に指示を出すと、ゆっくり着物の少女との間合いを詰めていきます。    足手まといと思われたかもしれない。私は無性に焦り、その背中に叫びました。   「私も一緒に戦います! 今度は、仕留める覚悟で――」   「ならば、尚更行くことだ。フルス君もそこへ向かった」    フルスさんが地下に?    思わぬ言葉に、私は疑問抱きます。    わざわざ地下に行くなんて、何かあるのでしょうか? 襲撃と関係が?    考えてみても分かりません。何はともあれ、ここはリーレンさんに任せるとしましょう。フルスさん一人では――私より安心できますけど、リーレンさんが行けと言っているのです。信じなくては。   「分かりました。ではお願いします!」    剣を納めて踵を返し、言われた地下への道を探します。    道……地下なのですから、階段がある筈。    あちこちに視線を巡らせると、二階への階段、その下の壁に不自然な切り込みを見つけます。    ちょうど長方形。いかにもな隠し扉です。  
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